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仙台高等裁判所 昭和38年(ネ)194号 判決

控訴人 寺崎はな

被控訴人 仙台国税局長

訴訟代理人 朝山崇 外三名

主文

控訴費用は控訴人の負担とする。

本件控訴を棄却する。

事  実 〈省略〉

理由

(一)  当裁判所は、次に原判決の認定の一部を改め、理由を付加するほか、事実の確定並びに法律判断については原審と所見を同じくするから原判決の理由を引用する。(ただし、原判決理由一において原告(控訴人)が明らかに争わない事実として確定する事実中、審査決定と原告(控訴人)の申告額との差額については、原判決添付別表(二)の税込入場料金から別表(一)の税込入場料金を差引いた額となる。)

(二)  原判決理由二中、九枚目表五~六行目に「国税庁調査による全国平均歩合は五割七分八厘」とあるを「国税庁調査による全国平均歩合は五割七分七厘」と、一〇枚目表二行目に「昭和二九年一〇月中」とあるを「昭和三〇年一〇月中」と認定を改め、九枚目裏末行から一〇枚目表五行目までの認定資料として本件辨論旨の全趣を加える。

(三)  控訴人は本件審査決定には理由の記載がない旨主張するので考えるに、成立に争いのない乙第五七号証の一・二、第五八号証の二・三及び同号証の四の一・二によると、被控訴人の控訴人に対する昭和三五年三月三〇日発送の仙協第一七〇号(仙局間消第六八号、仙局間監第二六号)本件審査決定通知書には、一関税務署長の再調査は、原則的に妥当と認められるが、調査内容中調査上の誤りと認められる四七、四五〇円と控訴人の主張に理由があると認められる東宝セールスマン岡保正からの預り金一六〇、〇〇〇円、合計二〇七、四五〇円を興行収入と誤認したので、この部分を取消す旨並びにその結果の課税標準額及び入場税額記載があること、一関税務署長の控訴人の代理人寺崎金次郎に対する昭和三三年一二月四日到達の再調査請求に対する決定通知書には、昭和二九年五月から昭和三一年一月までの間、控訴人の業務担当者寺崎邦男が控訴人の業務に関し、入場税法第一九条所定の入場券の交付及び切取りの義務に違背して、入場者に入場券の半片を切取らないで再販売する方法により、税込入場料一三、九九六、八四〇円を領収したにもかかわらず、同法第二二条所定の帳簿を偽つて記載し、所轄税務署長に提出する当該月分入場税課標準額申告に当り、右期間領収した税込入場料七、八五七、三二五円と過少に申告して、この差額税込入場料六、一三九、五一五円に対する入場税額五五八、〇一〇円をぼ脱しまたはせんとしたものであり、証拠書類として提出された借用証写と称するものは、単に貴殿において作成したものと認められる書類であつて、なんら証拠力を有するとは認められない旨の記載があることが明らかであり、昭和三二年一一月一五日一関税務署長が控訴人の経営にかかる映画館「文化映画劇場」の昭和二九年五月一八日から昭和三一年一月三〇日までにおける税込入場料金を一三、九九六、八四〇円、課税標準額を一二、一一九、四五八円、入場税額一、七五三、九六〇円と決定し、控訴人がすでに納付した税額との差額五五八、〇一〇円の納付を命じ、控訴人がこれに対し、再調査並びに本件審査請求をなし、被控訴人が前記審査決定をもつて、再調査決定の一部を取消し、税込入場料金を一三、七八九、三九〇円、課税標準額を一一、九三一、一五八円、入場税額を一、七三五、一三〇円と認定し、控訴人との申告の差額を税込入場料金五、九三二、〇六五円、課税標準額五、三九一、八〇〇円、入場税額五三九、一八〇円と決定し、昭和三五年四月七日その通知書が控訴人に到達したことは当事者間に争いがないから、本件審査決定に理由の記載を欠くものということができない。

進んで右審査決定の理由の記載が相当であるかどうかを考えるに審査決定の理由をいかなる程度に記載すべきかは、当該審査請求において不服とする具体的事由につき、その理由があるか否かの判断を一般人をして理解し得る程度に記載することを要するものと解されるところ、方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認める乙第五八号証の一、前記乙第五八号証の二、原審証人石河賢次郎・佐原良輔・寺崎邦男の各証言によると、控訴人の本件審査請求における不服とする事由は、要するに控訴人の申告は正当であるというのでつて、被控訴人の現金支出調査に際し控訴人の業務担当者寺崎邦男が係官の質問に対し、右調査の対象となつた支出のうちには、借入金、預り金等を含み、その全部が文化映画劇場の興業収入ではない旨を答えたが、前記東宝セールスマン岡保正からの預り金一六〇、〇〇〇円を除いては明らかにすることができず、また控訴人の申告が正しいものであることを証明することができなかつたことが認められ、以上認定の経過に徴するときは、本件審査決定における理由の記載は相当というべく、これが違法であるとの控訴人の主張はすべて理由がない。

よつて、民事訴訟法第三八四条・第九五条・第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 羽染徳次 野村喜芳 小木曽競)

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